| 今回は急性心筋梗塞の診断に活用される心筋トロポニンTを取り上げます。
◆心筋トロポニンT(TnT)
心筋トロポニンTって何?
トロポニンは、筋収縮機能を調節している物質で、心筋、黄紋筋の収縮調節をつかさどる蛋白です。心筋トロポニンは心筋細胞を構成する細いフィラメントであり、トロポニンT、トロポニンCとトロポニンIの3成分からなっています。
現在心筋トロポニンTは、心筋特異性の最も高い検査です。心臓では心筋の構造蛋白であるとともに、一部は細胞質にも存在し、心筋壊死を反映して血中レベルが増加します。急性心筋梗塞では約3〜6時間後から上昇し、8〜18時間後に最高値に達し、2〜3週間後まで有意な上昇が続きます。
早期に閉塞冠状動脈が治療などで再び流れるようになると、遊離型のトロポニンTがまず血中に増加した後減少し、しばらくして傷害筋原線維からのトロポニンTが、血中に出現・増加という2峰性のピークを成します。
◎基準値 測定結果の判定
(陽性の場合)…心筋傷害の存在を示します。
(陰性の場合)…心筋傷害が起きていないと考えます。
但し、心筋トロポニンTの遊出動態により、梗塞発症の初期では陰性を示すことがありますので心筋梗塞の疑いがあるときには、時間をおいて再検査をすることを勧められます。(梗塞発症後に心筋トロポニンT濃度が上昇するのに3〜5時間かかります。)
キット「トロップT センシティブ」の測定感度は0.1ng/mlです。
◎異常値を示す場合
考えうる原因と疾患
■陽性を示すもの
(高頻度)…急性心筋梗塞
(可能性)…不安定狭心症、心筋炎、高度の腎不全、非常に高度の骨格筋障害、心臓移植後の拒絶反応、開心術時の心筋障害
◎対 策
急性心筋梗塞、不安定狭心症、心筋炎を考えて診断と治療を急ぐ。CK CK-MB、AST、LDH、BUN、クレアチニン、赤沈、心エコー、冠動脈造影、心電図モニター、ニトログリセリン投与など
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◎検査の注意点
検体のヘマトクリット値が高い場合、血漿量不足のため展開不良を引き起こす場合があります。慢性腎不全などで長期透析療法の患者で、陽性を示すという報告があります。溶血した検体は測定に影響を及ぼすおそれがあります。
キット「トロップT センシティブ」ではEDTA添加、ヘパリン添加全血を検体として用います。
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コラム
CK上昇がないから急性心筋梗塞の心配はない?
トロポニンTやトロポニンIは、CK CK-MBでは検出できなかった不安定狭心症の微小心筋障害の30%が診断可能である。CK-MB上昇を認めず、トロポニン上昇を認める急性冠症候群(ACS)は心電図でST上昇を認めなくても、突然死や急性心筋梗塞発症の高リスクであることが証明されている。
(中略)2000年の欧州心臓病学会/米国心臓病学会の心筋梗塞診断基準のガイドライン改訂では、トロポニンが上昇している不安定狭心症は高リスク群であり、急性心筋梗塞に分類された。従来のWHO分類の心筋梗塞とトロポニンの上昇を認める不安定狭心症は、ともに心筋梗塞として扱われている。
このように胸痛患者においてCK上昇がなく、トロポニン上昇のみであっても心イベントの発症率は高いため、細心の注意をもって対処すべきである。
(東京医科大学八王子医療センター
循環器内科 会沢 彰/同センター長 高沢謙二)
MedicalTechnology Vol38 No.5 (2010・5)より抜粋
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【参考文献】
『検査のすべて』主婦の友社
『臨床検査データブック 2007〜2008』文光堂
『わかる! 検査値とケアのポイント』医学書院
『最新臨床検査のABC』日本医師会
キット「トロップT センシティブ」添付書
『臨床検査項辞典』医歯薬出版株式会社
(文責:花田) |