消化器病センター
*数値データはすべて2022年1月1日~2022年12月31日の1年間です。
はじめに
令和4年も新型コロナに振り回された1年となりました。コロナの影響と人口減少が相まって、手術数や検査件数など消化器病センターへの影響も少なからずありました。また麻酔科人員不足による緊急手術の制限などは、救急医療にとって厳しい1年となりました。しかし消化器病センターは国指定の地域がん診療病院として、また地方の救急医療の要として、十分にその役目を果たしたと考えています。
消化器病センターは出水市、阿久根市、長島町の出水二次医療圏全体を医療圏としています。実際、入院の約半数は阿久根市以外の患者さんです。診療は消化器外科、と消化器内科、放射線科が一体となって当たり、回診やカンファレンスを毎日合同で行うなど、密な連携で医療の質の向上に務めています。看護師や放射線技師、検査技師、リハビリスタッフ、栄養士、社会福祉士などコメディカルが加わり、良好なチーム医療が行われています。
診療内容は消化管や肝胆膵をはじめ、乳腺、甲状腺、肺など幅広い疾患に対応しています。とくに肝胆膵疾患ではEUS-FNAまで施行し、質の高い診断が行われています。常勤の歯科衛生士による積極的な口腔ケアが行われているのも当院の特徴です。放射線治療は済生会川内病院へ、困難な症例は大学病院へと、高次医療機関との連携も良好です。ひとりの患者さんに対し、検査から内科的治療、外科的治療、化学療法、緩和ケアに至るまで、最初から最後まで一貫して対応できることは当センターの大きな特徴のひとつとなっています。
理念
当消化器病センターは、地域の中核病院として適切な検査ならびに診断・治療を住民に提供し、都市部と変わりない質の高い医療が地域で完結することを目標に、常に努力していきます。
各種ガイドラインや学会のコンセンサスなどに基づいた、最新の標準的医療を行うことを基本とします。
外来
外来日は月曜日から金曜日となります。診察日は消化器内科と消化器外科で異なるので診察表を確認してください。その他、火・木・金曜日に化学療法外来、火曜日の午後にセカンドオピニオン外来、木曜日の午後に緩和ケア外来があります。
非常勤の先生による特殊外来は、第1、第3金曜日が厚生連病院の馬場芳郎先生による肝臓外来、第1木曜日が鹿児島大学外科の新田吉陽先生による乳腺・内分泌外来、第2、第4木曜日が鹿児島大学呼吸器外科の青木雅也先生による呼吸器外科外来となっています。
内視鏡的検査・治療および経皮的検査・治療
上部および下部消化管内視鏡は、月曜日から金曜日まで毎日行なっています。EMRやESD、消化管出血への対応など内視鏡的治療も積極的に行っています。膵・胆道系に関してはERCPやENBD、PTCDのほか、EUSやEUS-FNAも行っており、充実した診断、治療を行っています。肝腫瘍に関してはRFAや経動脈治療(TACE)など施行しています。検査件数については添付の表をご参照ください。
手術
月、水、金曜日が定期手術日で、その他に緊急手術が行われます。胃癌や大腸癌を中心とした消化器癌の多いことが特徴ですが、その他に肝胆膵や肺、乳腺、甲状腺など幅広い疾患を対象としています。鏡視下手術にも積極的に取り組んでいます。最新の設備の手術室で麻酔科専門医の管理のもと、安全な手術が行われています。また鹿児島大学の病理学教室と遠隔病理診断システムを導入、地方でありながら術中迅速病理が可能となっています。手術内容の詳細は手術実績表をご参照ください。
化学療法
がん化学療法は、医師・看護師・薬剤師の緊密な連携のもとコンピュータ管理で安全に実施されています。現在は外来での化学療法が主体で、専用の外来がん化学療法室を設置しています。がん化学療法認定看護師とがん専門薬剤師が常勤しており、毎月第2火曜日に多職種でキャンサーボーを開催するなど、より安全で質の高い化学療法を目指しています。
緩和ケア
緩和ケア病棟および緩和ケアチームで、がん患者さんのあらゆる苦痛の緩和に早期から取り組んでいます。緩和ケア病棟は、北薩地域では唯一となっています。緩和ケア認定看護師や臨床心理士(公認心理士)をはじめ, 多職種でのチーム医療を行っています。
病棟
6階が消化器患者の主病棟となっています。月曜日、水曜日、金曜日は朝7時30分から回診と多職種によるカンファレンスを行ない、火曜日と木曜日には7時から回診後にそれぞれ勉強会と麻酔科の医師や手術室の看護師を加えての術前カンファレンスが開かれます。病棟には専任の薬剤師、リハビリスタッフ、栄養士、社会福祉士、医事課職員が配置され、医療の質の向上に取り組んでいます。
研修・学会発表・対外活動など
毎日の業務に追われる中、研修や学会発表にも力を入れています。詳しくは別項“学術実績”をご参照ください。
人事(2024年4月現在)
消化器病センターの常勤医師は外科4名、消化器内科2名の計6名体制です。非常勤医師として、消化器外科今村先生、放射線科堀之内先生、肝臓内科馬場芳郎先生、乳腺内分泌外科新田吉陽先生、呼吸器外科青木雅也先生、そして熊本大学消化器内科の先生方にお世話になっています。常勤医師の人事は、以下のとおりです。
副院長・主任外科部長 柳 政行 (2023年4月~現在) | 鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 | 日本外科学会専門医・指導医 日本消化器外科学会専門医 日本消化器病学会専門医・指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医 (消化器・一般外科、胃) 日本食道学会認定医 日本腹部救急医学会 腹部救急認定医 ロボット支援手術施行認定資格 (Certificate of da Vinci Console Surgeon) 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 日本ロボット外科学会 国内B級 |
外科部長 野田 昌宏 (2023年4月~現在) | 鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 | 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会 専門医 消化器がん治療認定医 日本内視鏡外科学会内視鏡技術認定医 日本腹部救急医学会 腹部救急認定医 |
外科 小田原 晃 (2023年4月~現在) | 鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 | 外科専門医 |
外科 恒吉 弥沙 (2024年4月~現在) | 鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科 | |
消化器内科主任部長 恒吉 研吾 (2024年4月~現在) | 鹿児島大学 消化器内科 | 日本内科認定医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器病学会専門医 |
消化器内科 桑原 萌絵未 (2024年4月~現在) | 鹿児島大学 消化器内科 |
2022年各種データ(2022年1月~12月)
手術件数
麻酔別
全手術件数 | 227 |
全麻 | 188 |
局麻 | 39 |
主な疾患別・術式別
[ ]内は、うち鏡視下手術数
消化管疾患
胃癌
胃全摘術 | 2 [1] |
遠位側胃切除術 | 8 [6] |
噴門側胃切除 | 0 [0] |
胃部分切除 | 1 [1] |
胃空調バイパス | 4 [2] |
胃・十二指腸潰瘍
大網充填 | 0 [0] |
大腸癌
結腸切除 | 21 [11] |
低位前方切除 | 4 [4] |
経肛門切除 | 1 |
マイルズ手術 | 0 |
人工肛門造設 | 2 |
ハルトマン手術 | 0 |
その他消化管疾患
大腸穿孔 | 3 [0] |
小腸穿孔 | 2 [0] |
その他の腹膜炎 | 2 |
腸閉塞 | 5 [1] |
軸捻転 (結腸過長症) | 0 [0] |
虫垂炎 | 15 [15] |
直腸脱 | 5 |
痔核・痔瘻・肛門周囲膿瘍 | 6 |
人工肛門閉鎖 | 2 |
試験開腹 | 0 |
腹腔鏡下生検 | 0 |
肝癌
肝葉切除 | 0 |
肝部分切除・亜区域切除 | 1 |
開腹RFA | 0 |
経皮的RFA | 1 |
経皮肝生検 | 1 |
脾臓
外傷性脾損傷 | 0 |
胆管癌
膵頭十二指腸切除 | 0 |
胆嚢腫瘍・壁肥厚
胆嚢切除術 | 5 [5] |
胆嚢切除+肝床切除±胆管切除 | 0 |
膵管胆管合流異常
胆嚢摘出 | 0 |
分流手術 | 0 |
肝嚢胞
肝嚢胞開窓術 | 0 |
胆石症
胆嚢切除術 | 33 [32] |
総胆管結石
総胆管切開切石術 | 2 |
後腹膜腫瘍
切除術 | 0 |
肺癌
縦隔腫瘍 | 0 [0] |
肺部分切除術 | 1 [1] |
甲状腺腫瘍
切除術 | 3 [1] |
副甲状腺
切除術 | 2 |
乳癌
乳房全切除術 | 8 |
乳房温存手術 | 0 |
腹壁手術・その他
ソ径・大腿・臍ヘルニア | 30 [23] |
臍ヘルニア | 5 |
腹壁瘢痕ヘルニア | 5 |
閉鎖孔ヘルニア | 0 |
横隔膜ヘルニア | 0 |
皮下腫瘤摘出 | 9 |
リンパ節プローベ | 3 |
創処置 | 1 |
気管切開 | 2 |
皮下ポート 挿入・抜去 | 26 |
鹿大紹介症例
新規症例( )内は手術症例
全症例 | 新規症例 | |
---|---|---|
食道疾患 | 11 | 7 (3) |
胃疾患 | 9 | 4 (4) |
大腸疾患 | 9 | 4 (4) |
肝疾患 | 52 | 1 (0) |
胆・膵疾患 | 18 | 7 (5) |
乳腺疾患 | 3 | 1 (1) |
甲状腺疾患 | 4 | 3 (2) |
合計 | 56 | 27 (19) |
化学療法(点滴)
患者数 | のべ件 | |
---|---|---|
外来化学療法 | 92 | 701 |
入院化学療法 | 45 | 121 |
緩和医療対象
患者数 | |
---|---|
緩和ケア病棟 | 117 |
緩和ケアチーム | 97 |
内視鏡関連データ
上部消化管内視鏡
患者数 | のべ 実施件数 | |
---|---|---|
検査のみ | 1328 | 1482 |
EMR(良性) | 6 | 6 |
EMR(悪性) | 1 | 1 |
ESD(良性) | 3 | 3 |
ESD(悪性) | 6 | 6 |
止血術 | 29 | 34 |
PEG造設 | 31 | 31 |
食道ステント | 2 | 2 |
静脈瘤治療 | 4 | 5 |
食道ESD | 1 | 1 |
下部消化管内視鏡
患者数 | のべ 実施件数 | |
---|---|---|
検査のみ | 551 | 577 |
EMR(良性) | 147 | 148 |
EMR(悪性) | 12 | 12 |
ESD(良性) | 1 | 1 |
ESD(悪性) | 2 | 2 |
止血術 | 10 | 17 |
肝・胆道系検査処置
患者数 | のべ 実施件数 | |
---|---|---|
ERCPのみ | 6 | 6 |
PTCD, PTGBD | 1 | 1 |
胆管ドレナージ (含乳頭切開) | 48 | 56 |
内視鏡的ステント留置 (含排石) | 9 | 9 |
膵管ステント | 3 | 3 |
EUS | 57 | 60 |
肝腫瘍
患者数 | のべ 実施件数 | |
---|---|---|
RFA(経皮) | 1 | 1 |
RFA(開腹) | 0 | 0 |
TACE | 2 | 2 |
TAE | 2 | 2 |
気管支鏡
患者数 | のべ 実施件数 | |
---|---|---|
3 | 3 |
学術実績 (令和4年1月~令和4年12月)
学会発表
西田祐一朗 | 真菌感染を伴う胃潰瘍穿孔の1手術例,第83回鹿児島県臨床外科学会医学会, 鹿児島市,3月19日,2022(Web) |
西田祐一朗 | 予防的人工肛門増設術を伴うTaTME併用ロボット支援下直腸切除術後に難治性後腹膜膿瘍をきたした1例, 第77回日本消化器外科学会総会,横浜市,7月21日,2022(Web) |
座長
今村 博 | 医療経営Webセミナー,出水市, 3月14日,2022(Web) |
瀬戸山徹郎 | 北薩地区CRC,出水市, 5月27日,2022(Web) |
今村 博 | 北薩摩消化器疾患研究会,出水市, 8月5日,2022(ハイブリッド) |
今村 博 | 第20回日本マネージメント学会九州・山口連合大会,鹿児島市, 11月4日,2022(Web) |
今村 博 | 第16回出水郡医科歯科連携研究会,出水市,11月11日,2022(ハイブリッド) |
今村 博 | 第15回出水郡医師会「文化講演会」, 出水市, 11月26日,2022 |
新聞 ほか
今村 博 | 医師会病院を中心とした新しい地域医療のあり方を目指して-本邦初の国立病院民間移譲病院としての歩み-, 第29回全国医師会共同利用施設総会記録集,2022 |