脳神経外科
はじめに
2024年4月の人事異動により、細山浩史部長、井上惠理医師が着任し、有田和徳常勤顧問・部長との3人体制へと変更になりました。また、今年度より、出水総合医療センター(出水市)の救急受け入れ体制が変更されたため、特に時間外において、出水地区の脳卒中・頭部外傷のほとんどを当院で受け入れることとなりました。これまで以上に当院当科の役割が大きくなっておりますが、一人でも多くの患者の転帰を改善すべく、全力で診療にあたっています。
外来
通常の外来診療は、有田和徳常勤顧問・部長が、月曜日午後、火曜~木曜の終日で行っており、必要に応じて細山浩史部長も外来診療を行っています。紹介型の外来診療が中心ですが、時間外や緊急を要する患者については、24時間365日いつでも対応しています。
脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)を始めとした脳血管障害、脳腫瘍、てんかんや三叉神経痛・顔面痙攣などの機能的脳神経外科疾患、頭部外傷関連疾患、水頭症、感染性疾患(脳炎・髄膜炎など)など、頭蓋内疾患のほぼすべてに対応しています。脳神経内科系疾患などについては、他院の脳神経内科と連携をとり、必要に応じて転送し、診療をお願いしています。
2023年の外来患者数は3,017人、2022年の外来患者数は2,863人でした。
入院
当院では急性期から慢性期まで、すべての時期に対応することが可能となっています。常勤医師で毎朝回診を実施し、週1回は多職種カンファレンス(医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・薬剤師・栄養士・ソーシャルワーカー)を行い、入院患者一人一人の治療方針や退院に向けたゴール設定などを検討し、チームで診療にあたっています。
入院病棟は、重症度や緊急度が高いもの、術後管理を行うHCU(ハイケアユニット)、急性期管理が主となる8階病棟、回復期リハビリテーション病棟である4階病棟の3つが主な病棟となっています。また、地域包括ケア病棟(5階病棟)や緩和ケア病棟も併設しており、患者の状態に合わせて病棟を使い分けています。
入院患者の多くはHCUもしくは8階病棟で急性期加療を行い、状態が安定した後、入院リハビリテーションの継続が必要な患者は、在宅復帰を目指して4階病棟でリハビリテーションに励みます。その後、自宅退院、施設への退院、療養型病院への転院など、患者の状態に合わせて転帰先が決まります。特に脳卒中においては、手術(開頭術・血管内治療)や血栓溶解療法を含む超急性期加療から慢性期リハビリテーションまで、すべてを当院で担うことが可能です。
2023年の入院患者数は421人、2022年の入院患者数は290人でした。
2023年度 入院患者数
脳血管障害
脳梗塞 | 175 |
脳出血 | 44 |
くも膜下出血(破裂脳動脈瘤) | 10 |
未破裂脳動脈瘤 | 24 |
未破裂椎骨動脈解離 | 12 |
硬膜動静脈瘻 | 2 |
頭蓋内血管狭窄症 | 3 |
内頚動脈狭窄症 | 7 |
一過性脳虚血発作 | 8 |
合計 | 285 |
頭部外傷関連疾患
急性硬膜外血腫 | 2 |
急性硬膜下血腫 | 4 |
慢性硬膜下血腫 | 28 |
外傷性くも膜下出血 | 12 |
頭部外傷による疾患(脳挫傷、脳震盪、頭蓋骨骨折、脳脊髄液漏出症) | 7 |
合計 | 53 |
脳腫瘍
髄膜腫 | 4 |
悪性神経膠腫 | 3 |
転移性脳腫瘍 | 1 |
海綿状血管腫 | 1 |
悪性リンパ腫 | 1 |
頭蓋内脊索腫 | 1 |
合計 | 11 |
機能的脳神経外科疾患
てんかん(けいれん重積・非けいれん性てんかん重積を含む) | 12 |
三叉神経痛 | 1 |
顔面痙攣 | 1 |
合計 | 14 |
感染性疾患
脳脊髄炎・髄膜炎 | 3 |
肺炎 | 14 |
合計 | 17 |
特発性末梢性顔面神経麻痺 | 7 |
めまい症 | 5 |
水頭症 | 6 |
脊髄脊椎疾患 | 2 |
その他 | 21 |
合計
合計 | 421 |
手術
月曜日を予定手術日としておりますが、麻酔科の協力体制も強化され、基本的に24時間365日手術ができる体制が整っています。急性期脳卒中に対する手術は、開頭術、血管内治療ともに迅速に対応可能であり、患者の転帰改善に大きく寄与しています。
予定手術も幅広く実施しており、未破裂脳動脈瘤に対する脳動脈瘤頚部クリッピング術・脳血管内コイル塞栓術、内頚動脈狭窄症に対する内頚動脈内膜剥離術・頸動脈ステント留置術、良性腫瘍(髄膜腫や聴神経腫瘍)に対する開頭腫瘍摘出術、三叉神経痛や顔面痙攣に対する頭蓋内微小血管減圧術、水頭症に対するシャント術や第3脳室底開窓術など、多くの脳神経外科病院で幅広く行われている術式や疾患から、稀で難易度の高い術式や疾患まで、幅広く対応しています。
2023年度 手術件数
脳動脈瘤手術
脳動脈瘤頚部クリッピング術(破裂) | 4 |
脳動脈瘤頚部クリッピング術(未破裂) | 10 |
脳動脈瘤被包術 | 1 |
血管内コイル塞栓術(破裂) | 3 |
血管内コイル塞栓術(未破裂) | 3 |
合計 | 21 |
高血圧性脳出血
開頭血腫除去術(脳内のもの) | 3 |
内視鏡下脳内血腫除去術 | 5 |
合計 | 8 |
脳梗塞:超急性期加療
経皮的血栓回収療法 | |
合計 | 8 |
頭部外傷関連
開頭血腫除去術(硬膜外のもの) | 1 |
開頭血腫除去術(硬膜下のもの) | 5 |
慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 | 26 |
合計 | 32 |
脳腫瘍
開頭腫瘍摘出術 | 4 |
広範囲頭蓋底腫瘍切除・再建術 | 1 |
合計 | 5 |
水頭症手術
第3脳室底開窓術 | 0 |
VPシャント術 | 3 |
LPシャント術 | 2 |
脳室ドレナージ術 | 5 |
合計 | 10 |
機能的脳神経外科手術
頭蓋内微小血管減圧術:三叉神経痛 | 0 |
頭蓋内微小血管減圧術:顔面痙攣 | 1 |
合計 | 1 |
内頚動脈狭窄症手術
内頚動脈内膜剥離術 | 0 |
頸動脈ステント留置術 | 4 |
合計 | 4 |
その他の手術
減圧開頭術 | 4 |
気管切開術 | 1 |
脳膿瘍全摘術 | 1 |
頭蓋形成術 | 3 |
創傷処置 | 6 |
合計 | 15 |
合計
合計 | 108 |
人事(2025年4月現在)
常勤顧問・部長 有田 和徳 (2018年4月〜現在) | 鹿児島大学脳神経外科 名誉教授・第3代教授 (2005年10月1日 ~2018年3月31日) | 医学博士 日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本脳卒中学会専門医・指導医 日本脳卒中の外科学会シニア技術指導医 日本救急医学会専門医 日本てんかん学会認定医・指導医 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医 日本脳ドック学会認定医(2024年度取得予定・申請済) 身体障害者福祉法指定医 難病指定医 厚労省臨床修練指導医(外国人医師等指導) The Best Doctors in Japan 2024-2025 (2016年以降継続受賞) |
部長 細山 浩史 (2024年4月〜現在) | 鹿児島大学脳神経外科 | 医学博士 日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本てんかん学会認定医・指導医 日本小児神経外科学会認定医 日本神経内視鏡学会技術認定医 日本脳ドック学会認定医(2024年度取得予定・申請済) 身体障害者福祉法指定医 難病指定医 |
脳神経外科 松田 大樹 (2025年4月〜現在) | 鹿児島大学脳神経外科 |
業績(2022年以降、下線は当院職員)
1). Okada T, Makimoto K, Arita K, et al :Dissecting aneurysm of the anterior inferior cerebellar artery in the internal auditory canal presenting with deafness without hemorrhage: A case report and literature review. Surgical Neurology International. 13:88, 2022
2). Kinoshita Y, Arita K, et al:Natural course of Rathke’s cleft cysts and risk factors for progression. Journal of Neurosurgery. 138:1426-1432, 2022
3). Kinoshita Y, Arita K, et al:Influence of growth hormone therapy on germinoma survivors. Pituitary 25:854-860, 2022
4). Kawahara T, Arita K, Hanaya R, et al:Dural sac shrinkage signs on spinal magnetic resonance imaging indicate overdrainage after lumboperitoneal shunt for idiopathic normal pressure hydrocephalus. Surgical Neurology International. 13:269, 2022
5). Makino R, Arita K, Hanaya R, et al:Delayed postoperative hyponatremia in patients with acromegaly: incidence and predictive factors. Pituitary. 26:42-50, 2022
6). Kinoshita Y, Arita K, et al:Predictive factors for recovery from adult growth hormone deficiency after transsphenoidal surgery for nonfunctioning pituitary adenoma. Journal of Neurosurgery. 137: 629-634, 2022
7). Kamil M, Arita K, et al:Bibliometric Analysis of the Neurosurgery Publication Productivity of Southeast Asia in the Previous Decade. World Neurosurg. 172:74-78, 2023
8). Taguchi A, Arita K, et al:Optic tract edema in craniopharyngioma as a predictor of BRAFV600E mutation presence. Jpn J Clin Oncol. 53:378-385, 2023
9). Kawahara T, Arita K, Hanaya R, et al:Paravertebral Cerebrospinal Fluid Exudation in Young Women with Postdural Puncture. Asian Journal of Neurosurgery. 18:117-124, 2023
10). Kawahara T, Arita K, Hanaya R, et al:Patients of idiopathic normal-pressure hydrocephalus have small dural sac in cervical and upper thoracic levels: A supposed causal association. Surgical Neurology International. 14:391, 202
11). Tanoue N, Hanaya R, Arita K, et al:Endovascular treatment of unruptured aneurysm arising from duplicate origin of the middle cerebral artery – A case report and literature review. Surgical Neurology International. 15:194, 2024
12). Inoue E, Yoshimura S, Hosoyama H, Hanaya R, Arita K, et al:A pituitary gland squeezed upward by intrasellar kissing carotid arteries: Mimicking a pituitary microadenoma. Surgical Neurology International. 15:372, 2024