消化器病センター
*数値データはすべて2020年1月1日~2020年12月31日の1年間です。
はじめに
2020年の消化器病センターは新型コロナ感染症による受療動向の変化を受けて、内視鏡や手術の症例数がやや減少傾向にありました。当センターは阿久根市のみならず、出水市、長島町を含めた広域の患者さんを対象としています。
国のがん拠点病院のひとつである地方がん診療病院として、伊佐市、水俣市を含めた北薩摩地域では唯一厚生労働省の指定を受けています。
緩和ケア病棟はさらに薩摩川内市やさつま町を含めた薩摩半島北部で当院のみであり、主に消化器外科が担当しています。当センターでは消化器外科、消化器内科、放射線科の医師が一体となって診療に当っています。診療内容は消化管はもとより、肝胆膵や乳腺、甲状腺、肺など輻広い疾患に対応しています。また医師と共に数多くのコメデイカルが一体となってチーム医療を展閲しています。検査から内科的治療、外科的治療、化学療法、緩和ケアに至るまで、ひとりの患者さんに対し最初から最後まで一貰し
て対応できることは、当センターの大きな特徴のひとつとなっています。放射線治療は主に済生会川内病院と密に連携しています。このように待機的な高度医療から救急医療まで、幅広く対応しています。困難な症例に対する大学病院など閥次医療機関との連携も良好です。
4月からは消化器内科部長として上野雄一先生が、7月からは外科主任部長として久保昌亮先生が新しく赴任され、新しい体制で活動が開始されました。上野先生は肝胆膵疾患にも精通されていて、ERCPやEUSなどの充実が図られました。久保先生は外科歴30年のベテランで、外科疾患に輻広く造詣があります。
地方であっても、住民のみなさんが住み慣れた士地で都市部と変わりない良質な医療を享受できることを目標に、積極的に取り組んでいます。
理念
当消化器病センターは、地域の中核病院として適切な検在ならびに診断・治療を住民に提供し、都市部と変わりない質の高い医療が地域で完結することを目標に、常に努力していきます。
各種ガイドラインや学会のコンセンサスなどに基づいた、最新の標準的医療を行うことを基本とします。
外来
外来日は月曜日から士瞳日となります。診察は月・水が消化器内科、火・木が外科、金が消化器内科・外科混合となります。その他、火・木·金に化学療法外来、木の午後に緩和ケア外来、火の午後にセカンドオピニオン外来があります。
非常勤の先生による特殊外来は、第1、第3金曜日に厚生連病院の馬場芳郎先生による肝臓外来、第1木曜日に鹿児島大学外科の新田吉陽先生による乳腺・内分泌外来、第2、第4木曜日に鹿児島大学呼吸器外科の上田和弘准教授による呼吸器外科外来があります。
内視鏡的検査・治療および経皮的検査・治療
上部および下部消化管内視鏡は、月曜日から土曜日まで鉦日行なっています。EMRやESD、食道静脈瘤の内視鏡的治療も積極的に施行しています。処置を含めたのべ件数は、上部消化管が1345件、下部消化管が689件でした。ERCPやENBD、PTCDといった膵・胆道系の検在や治療は月曜日と木曜日を中心に行なっており、のべ107件でした。
本年度からEUSも導入し、膵・胆道疾患の診断能力がさらに充実されました。
肝腫瘍に対する対外的RFAは1件、経動脈治療(TACE)は1件に施行されました。気管支鏡は6件に施行されています。
手術
月、水、金曜日が定期手術日で、その他に緊急手術が行われています。手術総件数は260例で、うち全身麻酔が230例でした。胃癌や大腸癌を中心とした消化器癌の手術が多いことが特徴ですが、その他肝胆膵や肺、乳腺、甲状腺など幅広い疾患を対象としています。最新の設備の手術室で麻酔科専門医の管理のもと、安全な手術が行われています。また鹿児島大学の病理学教室とインターネットで繋ぎ、術中にがん細胞の有無を迅速に判断できる遠隔病理診断システムを導人しています。手術内容の詳細は手術実績表をご参照ください。鏡視下手術にも積極的に取り組んでいます。
化学療法
がん化学療法は、医師・看護師・薬剤師の緊密な連携のもとコンピュータ管理で実施されています。現在は外来での化学療法が主体で、専用の外来がん化学療法室で行なわれます。最近は免疫チェックポイント薬の使用も増加しています。今年の点滴による化学療法の実績は年間のべ620件でした。がん化学療法認定看護師とがん専門薬剤師が常勤しており、毎月第2火曜日にキャンサーボードを開催するなど、より安全で質の高い化学療法を目指しています。
緩和ケア
緩和ケア病棟および緩和ケアチームで、がん患者さんのあらゆる苦痛の早期からの緩和に取り組んでいます。緩和ケア病棟は、北薩地域では唯一となっています。緩和ケア認定看護師や臨床心理士(公認心理士)をはじめ、多職種でのチーム医療が行われています。1年間の緩和ケア病棟入院患者数は106名、緩和ケアチーム対応患者数は109名でした。
病棟
6階が消化器病棟となっていますが、その他の病棟に人院する場合もあります。月曜日、水曜日、金瞳日は朝7時30分から回診と医師、病棟看護師、薬剤師、検究技師、リハビリスタッフなど多職種によるカンファレンスを行なっています。さらに火曜日には7時から回診その後に勉強会、木曜日に7時から回診その後に麻酔科の医師や手術室の看護師を加えての術前カンファレンスが開かれます。病棟には専任の薬剤師、リハビリスタッフ、栄養士、社会福祉士、医事課職貝が配置され、医療の質の向上に取り組んでいます。
学会発表・講演・対外活動など
第一線での毎日の業務に追われる中、学会発表にも力を入れています。詳しくは別項”学術実績”を参照してください。
人事
消化器病センターの常勤医師は外科5名、消化器内科2名、放射線科1名の計8名体制です。
非常勤医師として、肝臓内科馬場芳郎先生と乳腺内分泌外科新田吉陽先生、呼吸器外科上田和弘先生、そして熊本大学消化器内科の先生方にお世話になっています。常勤医師の人事は、以下のとおりです。
消化器病センターの常勤医師
氏 名 | 職 位 | 期 間 |
---|---|---|
今村 博 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科) |
院長 消化器病センター長 |
平成18年7月~現在 |
掘之内 信 (九州大学放射線科) |
副院長 放射線科科長 |
平成17年7月~現在 |
瀬戸山 徹郎 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科) |
診療部長 | 平成30年8月~現在 |
黒島 直樹 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科) |
外科科長 | 令和4年4月~現在 |
吉井 貴子 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科) |
外科 | 令和3年4月~現在 |
西田 祐一朗 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科) |
外科 | 令和3年4月~現在 |
冨田 実代 (鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科) |
外科 | 令和4年10月~現在 |
上野 雄一 (鹿児島大学消化器内科) |
消化器内科主任部長 | 令和2年4月~現在 |
灰床 裕介 (鹿児島大学消化器内科) |
消化器内科 | 令和3年4月~現在 |
学術実績(令和2年1月~令和2年12月)
原著論文
- 山崎洋一 他:『胆石症術後に腸閉塞をきたした回腸子宮内膜症の1例』
鹿児島大学医学雑誌,3月,2019
学会発表
- 小園智子他:『緩和ケア病棟配属直後の看護師に対するシミュレーション教育』,第25回日本緩和灰療学会学術集会, Web, 8月,2020
- 永石尋幹他:「ブリーフセラピーのスピリチュアルケアヘの援用~解決構築としての実存構築』,第25回日本緩和医療学会学術集会, Web, 8月, 2020
- 落竜昇他:日本緩和・支持・心のケア合同学術集会, Web, 8月, 2020
- 今村博他:『地方における医科歯科連携の取り組み一院内歯科を持たない地域がん診療病院において一』第17回日本口腔ケア学会,長崎市, 9月3日, 2020 講演
講演
- 下村寛貴:「急性虫垂炎』, 8月診療連携勉強会, 8月13日, 2020
- 小園智子他:『当院における緩和ケア病棟看護師の教育について』緩和ケアWebセミナー, Web, 1月20日, 2021
座長
- 久保昌亮:緩和ケアWebセミナー. Web,1月20日. 2020
研修会主催
- 「がん等の診療に携わる医師等のための緩和ケア研修会」開催,阿久根市, 9月20日,2020
2020 年各種データ(2020年1月~12月)
手術件数
全手術件数 | 260 |
---|
麻酔別
全麻 | 230 |
---|---|
局麻 | 30 |
主な疾患別・術式別
[ ]内は、うち鏡視下手術数
内視鏡関連データ気管支鏡
消化管疾患 | |||
---|---|---|---|
胃癌 | 胃全摘術 | 4 | [1] |
遠位側胃切除術 | 4 | [3] | |
噴門側胃切除 | 1 | [1] | |
胃部分切除 | 3 | [2] | |
胃空調バイパス | 1 | [1] | |
胃・十二指腸潰瘍 | 大網充填 | 2 | [1] |
大腸癌 | 結腸切除 | 26 | [13] |
低位前方切除 | 4 | [4] | |
経肛門切除 | 0 | ||
マイルズ手術 | 0 | ||
人工肛門造設 | 2 | [1] | |
ハルトマン手術 | 0 | ||
その他消化管疾患 | 大腸穿孔 | 4 | [1] |
小腸穿孔 | 4 | [1] | |
その他の腹膜炎 | 3 | ||
腸閉塞 | 14 | [4] | |
軸捻転(結腸過長症) | 2 | [1] | |
虫垂炎 | 16 | [16] | |
直腸脱 | 3 | ||
痔核・痔痩.肛門周囲膿瘍 | 7 | ||
人工肛門閉鎖 | 1 | ||
試験開腹 | 3 | [3] | |
腹腔鏡下生検 | 1 | [1] | |
肝癌 | 肝葉切除 | 0 | |
肝部分切除・亜区域切除 | 4 | ||
開腹RFA | 0 | ||
経皮的RFA | 1 | ||
経皮肝生検 | 2 | ||
牌臓 | 外傷性牌損傷 | 1 | |
胆管癌 | 膵頭十二指腸切除 | 1 | |
胆嚢腫瘍.壁肥厚 | 胆嚢切除術 | 11 | [10] |
胆嚢切除+肝床切除士胆管切除 | 1 | ||
膵癌 | 膵頭十二指腸切除術 | 3 | |
膵体尾部切除 | 1 | ||
膵管胆管合流異常 | 胆躁摘出 | 0 | |
分流手術 | 0 | ||
肝嚢胞 | 肝嚢胞開窓術 | 0 | |
胆石症 | 胆嚢切除術 | 41 | [39] |
総胆管結石 | 総胆管切開切石術 | 2 | |
後腹膜腫瘍 | 切除術 | 0 | |
肺癌 | 縦隔腫瘍 | 1 | [1] |
肺部分切除術 | 3 | [3] | |
嚢胞性肺疾患 | 嚢胞切除術 | 0 | |
甲状腺腫瘍 | 切除術 | 10 | [2] |
乳癌 | 乳房全切除術 | 4 | |
乳房温存手術 | 0 | ||
腹壁手術・その他 | ソ径・大腿.腑ヘルニア | 44 | [34] |
腹壁搬痕ヘルニア | 2 | ||
閉鎖孔ヘルニア | 2 | [1] | |
横隔膜ヘルニア | 1 | ||
皮下腫瘤摘出 | 3 | ||
リンパ節プローベ | 6 | ||
創処置 | 6 | ||
気管切開 | 3 | ||
皮下ポート挿入・抜去 | 17 | ||
教室紹介症例新規症例( )内は手術症例 | 全症例 | 新規症例 | |
食道疾患 | 14 | 5(3) | |
胃疾患 | 1 | 1(1) | |
大腸疾患 | 8 | 4(4) | |
肝疾患 | 2 | 2(2) | |
胆・膵疾患 | 14 | 9(5) | |
乳腺疾患 | 4 | 3(3) | |
甲状腺疾患 | 1 | 0(0) | |
合計 | 44 | 24(18) | |
化学療法(点滴) | 患者数 | のべ件数 | |
外来化学療法 | 89 | 545 | |
入院化学療法 | 40 | 75 | |
緩和医療対象 | 患者数 | ||
緩和ケア病棟入院 | 106 | ||
緩和ケア外来 | 76 | ||
緩和ケアチーム入院 | 106 | ||
緩和ケアチーム外来 | 3 | ||
上部消化管内視鏡(計 1437) | 患者数 | のべ実施件数 | |
検査のみ | 1434 | 1263 | |
EMR(良性) | 3 | 3 | |
EMR(悪性) | 0 | 0 | |
ESD(良性) | 5 | 5 | |
ESD(悪性) | 12 | 12 | |
止血術 | 29 | 23 | |
PEG造設 | 35 | 35 | |
食道ステント | 2 | 2 | |
静脈瘤治療 | 3 | 2 | |
EUS | 82 | 92 | |
下部消化管内視鏡(計 689) | 患者数 | のべ実施件数 | |
検査のみ | 576 | 551 | |
EMR(良性) | 120 | 117 | |
EMR(悪性) | 4 | 4 | |
ESD(良性) | 2 | 2 | |
ESD(悪性) | 3 | 3 | |
止血術 | 13 | 12 | |
肝・胆道系検査処置(計 107) | 患者数 | のべ実施件数 | |
ERCPのみ | 7 | 7 | |
PTCD | 12 | 11 | |
内視鏡的ステント留置(含排石) | 68 | 61 | |
結石除去 | 28 | 28 | |
肝腫瘍 | 区分 | 患者数 | のべ実施件数 |
RFA | 経皮 | 1 | 1 |
開腹 | 0 | 0 | |
TACE | 1 | 1 | |
部分的牌動脈塞栓術 | 2 | 1 | |
患者数 | のべ実施件数 | ||
6 | 5 |